旅人の皆さんこんにちは。
2026年5月、ゴールデンウィークを利用して、どこか知らない場所への冒険を渇望していた私は、中央アジア・ウズベキスタンに行こうと決めました。
ウズベキスタンの首都タシケントへの直行便もありますが、運行は週1便。値段も少しお高めだったので、別の方法がないかと調べていたら、聞いたことのない現地の航空会社の名前が出てきました。
Qanot Sharq。お値段は片道3万円前後。今回は冒険だという思いで、ソウルからタシケントへの航空券を押さえました。そんな初めての航空会社の体験を、この記事に残していこうと思います。
2泊3日の乗り継ぎソウル滞在を終え、仁川空港からいよいよタシケントへ向かいます。
航空券は公式サイトから、ウズベキスタンソム建てで決済しました。日本発行のプリペイドカード(IDARE)でも、問題なく通りました。
,チェックインカウンターは出発の3時間前にオープンします。少し早めに行ってみると、すでに列ができていました。購入時に届くE-Ticketの提示を求められるので、パスポートと一緒に出します。こうした書類は、自作の旅アプリ「Romblan」にまとめていました。

カウンターの周りを見渡すと、東アジアの旅行者よりも、ウズベキスタンへ帰る人たちと思しき姿が目立ちます。搭乗前から、知らない土地へ向かうのだという高揚感に包まれました。
機内に乗り込むと、いたって普通でした。LCCのつもりで身構えていたのに、シートピッチはフルサービスキャリアと変わらない余裕があります。
前の座席にモニターがついていたので、一瞬エンターテインメントシステムがあるのかと期待しました。けれど案の定使えず、画面にはなぜかAir Chinaの文字。たぶん、お下がりの機材なのだろう。

シートポケットには機内Wi-Fiの説明書きがあり、つなげば手元のスマートフォンやタブレットで映画などを楽しめるようでした。ただ日本語のコンテンツはないので、見たいものは事前に用意しておくのがおすすめです。
飛行機は仁川を離陸し、やがて中国大陸へ。ぽつぽつと街が見える景色を眺めていると、ドリンクサービスが始まりました。あまり期待していなかったので、それだけで少し驚きます。

続けて、機内食も配られます。選べたので、私が頼んだのはビーフ。トマトソースで煮込んだミートボールに、白いご飯とスイートコーンが添えられた一皿です。メインだけ見ればシンプルですが、トレイの上は意外と賑やかでした。丸いパン、スライスチーズとサラミ、ミニトマトときゅうりのピクルス、小さなマフィンまで載っています。片道3万円の航空券にしては、ずいぶん手厚い。
ミートボールはトマトの酸味がきいた、機内食らしい味でした。それでも、温かい一皿が出てくるだけでじゅうぶんありがたく感じます。
いちばん心を掴まれたのは、トレイの端の小さな二つの袋でした。ピーナッツと、ドライアプリコット。袋には英語と並んでウズベク語が刷られ、ドライアプリコットは「QURITILGAN O'RIK」。干し杏はウズベキスタンの名産です。まだ機内にいるのに、味と文字の両方から、これから向かう国が静かに顔をのぞかせていました。

予想以上のボリュームで、搭乗前にラウンジで軽く食べていた私は少し後悔しました。それでも全部きれいに平らげ、残ったドライアプリコットをつまみながら、窓の外をぼんやりと眺めていました。
隣の席の方は、じっと座っているのが苦手なようで、ときどき話し相手のところへおしゃべりに出かけていきます。これもまた、異国情緒なのかもしれない。
飛行機が着陸態勢に入り、高度を下げ始めると同時に、ウズベキスタンの街並みが姿を現します。

それまで窓の外を埋めていたのは、乾いた茶色の大地でした。畑とも荒れ地ともつかない地面が続き、そのなかに、ふいに緑のかたまりが浮かび上がります。並木で細かく区切られた、背の低い建物の街。タシケントは乾いた土地に抱かれた緑の街なのだと、着陸の数分前に知りました。
タシケント国際空港は、こぢんまりとしていました。飛行機を降りてまず迎えてくれたのは、5月の乾いた熱気と、白く強い陽射しです。日本の初夏とは質の違う、肌の水分をすっと奪っていくような暑さでした。
入国審査は、拍子抜けするほどあっさりしていました。パスポートを差し出すと、ほとんど質問もなく通されます。
荷物を受け取ってターミナルを歩くと、想像していた空港とは少し違いました。売店らしい売店がなく、あるのは自動販売機くらい。しかもそれは、私のクレジットカードでは反応してくれません。到着して早々、小さくつまずいた格好です。
一方で、いい意味で裏切られたこともあります。空港のATMは使えないことがある、という事前情報を見ていたのですが、試してみると何の問題もなくウズベキスタンソムを引き出せました。
建物の外に出ると、今度はタクシーの勧誘です。これが、正直なところ少ししつこい。断ってもなかなか離れてくれず、私がベンチに腰を下ろすと、そのうちの一人は隣までついてきました。降り立った旅行者を待ち構える空気は、たしかにあります。
このあとには滞在登録という、ウズベキスタンならではの手続きも待っているのですが、それはまた別の記事に書きます。
,こうして振り返ってみると、Qanot Sharqは「聞いたこともない」というだけの航空会社でした。シートはふつうに快適で、機内食はむしろ手厚く、空の旅としては何ひとつ特別なことは起きませんでした。
あとで知ったのですが、Qanot Sharqとはウズベク語で「東の翼」という意味だそうです。読めなかった名前は、ただ東へ向かう翼の名前でした。特別だったのは航空会社ではなく、名前を知らないというだけで身構えていた、私のほうだったのだと思います。
知らない国の、知らない航空会社。もし次に同じ選択肢の前で迷う旅人がいたら、これは十分に「あり」ですよ、と伝えたい。
ドライアプリコットの国に、私はようやく降り立ちました。タシケントの街そのものの話は、また次の記事で。それでは、知らない場所への良い旅を。